診療内容

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小児脳神経外科

小児脳神経外科

小児科と同じく、小児脳神経外科の対象となる患者さんの年齢は15歳まで、つまり、だいたい中学校卒業までのお子さんです。この中には、生まれたばかりの新生児(中には体重800gの超低出生体重児もいます)から、ほとんど大人のような体格のティーンエージャーまで含まれます。対象となる疾患は、成人でもかかる病気や怪我(脳腫瘍、脳血管障害、てんかん、頭部外傷、脊髄損傷など)のほかに、小児に特有な病気(脳や脊髄の先天性異常)が含まれます。

小児の脳腫瘍は、視神経グリオーマ、脳幹部グリオーマ、上衣腫、髄芽腫、胚細胞腫瘍、頭蓋咽頭腫などの、成人では比較的珍しい種類の腫瘍が多いです。手術、放射線、抗がん剤による化学療法などを組み合わせて治療を行います。

小児の脳血管障害はもやもや病や脳動静脈奇形など、成人では珍しい種類の脳血管障害が起こります。もやもや病では血行再建術、脳動静脈奇形では開頭手術、血管内手術、放射線治療などを症例に応じて応用します。

小児は成人と比べ、頭が体幹・手足に対して大きいので頭部を打撲しやすいです。骨格が未熟なので激しい打撃がないようでも骨折をしていることがあります。しかし、小児の骨は再生力が強いので手術などの特別な治療をしなくても治ることがほとんどです。しかし、1歳未満の子では、脳の成長力に押されて骨折線が徐々に広がり瘤が出てくることが稀にあるので注意して経過観察が必要です。また、内出血が多いと心臓に戻る血液が足りなくなって輸血が必要になる場合もあります。

脳の先天性異常で最も多いのは水頭症という、脳の中の髄液が異常に多くなる病気です。超低出生体重児の脳出血の後遺症として起こったり、後述の脊髄髄膜瘤という病気に合併したりするほか、中脳水道狭窄症という、脳の中から外へ髄液が流出する経路が狭いために起こるものなど様々な原因があります。髄液の流れが悪いのか、吸収が悪いのか、といった状況に応じて内視鏡手術や脳室腹腔シャント手術を行います。

脊髄髄膜瘤はおよそ2000人に1人程度見られる病気で、背中(主に腰部)の皮膚が欠損し、脊髄と髄液を含んだ膜状の組織が盛り上がって露出します。脊髄の機能が障害されるため、排尿、排泄、足の動きなど、下半身の機能が失われます。皮膚が欠損しているので放置していると感染して髄膜炎、脳室炎となり生命の危機にさらされます。水頭症を合併することが半分以上の確率であります。脊髄髄膜瘤修復手術や脳室腹腔シャント手術を行って治療します。

新生児水頭症の一例

・左は手術前のCT画像
・右は手術後のCT画像
両方とも頭部を水平に切った断面図

手術前は脳室(脳の中の水の流れる部屋:CTでは黒い部分。白矢印。)が拡張し、脳実質(CTでは灰色の部分。赤矢印)が薄くなっています。

手術後には脳室が縮小し、脳実質の厚みが増しています。中心部に白い点があるのがシャントチューブ(髄液をお腹に流すためのチューブ)です。