担当:阿久津 博義、柴尾 俊輔
一般に良性腫瘍といわれる腫瘍は、手術で完全に摘出することが可能で、通常それ以上の治療を要しない腫瘍のことです。脳の表面の膜から発生する髄膜腫、耳の神経から発生する聴神経鞘腫などがその代表的なものです。これらの腫瘍においては、腫瘍周囲の大切な組織(神経、血管、脳実質など)を傷つけないよう手術を行うために、誘発電位、脳波など数々のモニタリング(監視)を行いつつ、顕微鏡下の手術により摘出を行っています。
とくに、小脳橋角部に発生する良性腫瘍の聴神経腫瘍に対しては、摘出の症例経験数が200例を超える経験豊富なスタッフが治療にあたっており、永続する顔面神経麻痺の出現率はきわめて低く、聴力もかなりの率で温存できるようになっています。
2センチ以下の小さな聴神経腫瘍では定位的放射線療法(ガンマナイフ)単独での治療が可能です。2センチを超える腫瘍でも、開頭手術だけにこだわらず、術後の神経症状の悪化を来たさぬよう、摘出術とガンマナイフを専門スタッフの判断により最適な組み合わせで用いて治療を行います。ガンマナイフ単独では径2センチ以下の小さな病変しか十分な治療ができないのですが、当院の手術技術との組み合わせにより、両者の長所を活かした治療が可能となっています。すなわち、後遺症を残す危険性のある部分は手術では操作せず、それ以外の部分を摘出し、残りの部分をガンマナイフで治療するという方法です。このような治療は、ガンマナイフが設置され、かつ良性腫瘍に対して高度の手術技術を有し、ガンマナイフについても豊富な経験を有するスタッフのいる施設でのみ可能であり、当院は全国的にみても、単一施設での集学的治療が可能な数少ない施設のうちの一つとなっています。