診療内容

診療内容

機能外科

微小血管減圧術

MVD

頭蓋内微小血管減圧術

顔やのどの強い痛み、顔のぴくつきに対する外科治療

漢字がたくさん並んだ難解そうな名前のこの術式は、三叉神経痛(発作的な顔の激痛)、舌咽神経痛(発作的なのどの激痛)、片側顔面けいれん(自身の意図に反して一方の顔が引きつれる/ぴくつく)に対して、それぞれの神経を圧迫している血管の走行を変えて神経から離す(減圧する)という方法のことです。

対象となる疾患(三叉神経痛, 舌咽神経痛, 片側顔面けいれん)によって細かな違いはあるのですが、いずれの場合も全身麻酔下にからだを横向き(側臥位)にして固定し、耳の後ろの骨の出っぱりのあたりに10センチ強の皮膚切開をおいて、頭蓋骨に500円玉ほどの大きさの孔を開けて行います。

顕微鏡下に目的の場所に到達したら、原因となっている「責任血管」を神経から離し、近くの骨や硬膜に吊り上げるか、血管と周囲の脳とのあいだにクッションを挟み込むかして、減圧をはかります。目論見どおりに操作ができれば、95%以上の患者さんで症状が消失します。

注意すべき合併症の一つに、片側顔面けいれんや舌咽神経痛の手術に伴う聴力障害(聞こえなくなる)があります。あたまの中で舌咽神経のすぐ近くを顔面神経と聴神経とが並んで走っているため、手術中に聴神経に余計な負担がかかると聴力を損ないます。これを防ぐ目的で、手術は聴性脳幹反応(ABR)という「聞こえ具合のモニター」のもとに行います。このため、私どもが術後の聴力障害を経験することはまれですが、術前には耳鼻咽喉科に聴力検査をお願いし、もともと反対側の聴力がよくない、という患者さんには原則として手術は行わず、まずはほかの治療(内服や注射)をお勧めすることが一般的です。

手術に伴う入院期間は一般的におよそ10日間で、これ以上の入院期間を要することもまれです。

治療の目的は「患者さんの痛み/不快を根本からなくす」ことにあり、術後に合併症を残さず、生活に不自由な障害が及ばないよう十分に配慮します。治療方針や合併症の可能性についてはご本人、ご家族の皆様にわかりやすくご説明し、ご納得いただけた場合に手術を行います。

担当医:荻野雅宏